お口に関する話

2009年2月アーカイブ

小児歯科の現場では、おおよそ3歳を過ぎたら、治療の必要性が理解できるとされています。緊急を要するような状況でなければ、無理には手を出さず治療に対するトレーニングをしてから歯科治療に当たります。しかし、痛みを取るためにやむを得ない場合や、治療の必要性が理解できない3歳未満児などの場合は、抑制具を用いて、強制的に治療をする事になります。強制治療とはいってもこの場合は、痛みを我慢させて治療するわけではなく予測できない動きを抑制した上で治療をするという事であり、治療後に痛くなかった事を本人にわかってもらうための一段階だと理解していただきたいと思います。治療後に「お利口でがんばったね。全然痛くなかったね。」と声をかけて、次回につなげる事が大切です。口を開けて、大人と同じように治療できない子供を相手にするのが小児歯科というわけです。

永久歯のうち、前歯の真ん中から数えて、6番目にある歯を第1大臼歯といいます。この歯はおおよそ6歳前後に生えてくるので、別名6歳臼歯とも呼ばれています。この時期は、子どもたちが、まだ上手に歯磨きを出来ないこと、歯の溝が深く複雑なこともあって永久歯に中では、ダントツにむし歯になりやすく、また、失われる率の高い歯であるといえます。一方、この6歳臼歯は、永久歯に生え替わった後のお口の中では一番大きく、かつかみ合わせの中心に位置するとても働き者の歯であるといえます。この歯のある人とない人では、物をかみ砕きすりつぶす咀嚼能力に大きな差が出ます。生えたばかりの永久歯にお薦めのむし歯予防法がシーラントです。

治療方法は、

  1. 歯の表面、溝の中を機械的に清掃します。
  2. 歯を削らずに深い溝を含めて樹脂がつきやすいように表面処理をします。
  3. 溝を中心に合成樹脂で歯をコーティングします。
といたって簡単です。歯を削らないので安心です。学校検診でむし歯がなくても歳をとって歯を失わないためにはこの治療法はとても有効だといえます。

乳歯は1才頃から生え始め三才頃には上下合わせて20本の乳歯が生えそろいます。乳歯にはそれぞれ名前があって真ん中からABCDEと呼びます。
例えば右下の一番奥の乳歯は「右下E」といいます。6才頃にはEの後ろにさらに6才臼歯という名前の永久歯が上下左右4本生えてきます。これと同時期にAはその役目を終え、下から生えてきた永久歯に生え替わります。このあとBCDEは順次1〜2年おきに下から生えてくる永久歯に置き換わっていきますが、最後の乳歯Eは12〜14才まで使用します。
言い換えると早期にEを失ってしまうと、中学生になるまでそこには歯は生えてこないと言うことです。Eを早期に失った場合、6才臼歯は前方に異動して位置の異常が起きるため、あとから生える永久歯の萌出スペースがなくなることになります。
このことで、歯並びや噛み合わせの異常が起こると言われています。

乳歯はどうせ抜けてしまって生え替わるのだから、乳歯のむし歯は、痛くなければ治療は必要ない???

さあ、どうでしょう。乳歯の下で永久歯はまだ歯ではなく「歯胚」といって歯になる前段階の状態で待機しています。乳歯が抜け落ちるまでの間に長い時間をかけて徐々に永久歯は出来上がっていきます。

この時期に乳歯に大きなむし歯を作り、放置することで、乳歯の根を伝わってばい菌が永久歯胚に到達し、エナメル質の減形成や着色など永久歯が影響を受けることもあります。乳歯は、永久歯の萌出とともに根が先の方から吸収し短くなって最後には抜けてしまいます。

順調に根が吸収するためには、むし歯などで神経を失ったりしていない健全な乳歯が有利なのは明らかでしょう。

むし歯に対する国民の意識が向上し、最近で歯の全周がむし歯になった、いわゆる味噌っ歯の子どもは少なくなった。それでもむし歯の本数が多すぎる場合はむし歯の進行止め「フッ化ジアミン銀」(サホライド)という薬物を乳歯に塗る場合がある。サホライドはフッ素化合物なので、銀が沈着して真っ黒になるが、これでむし歯の進行を抑え、最終的に審美的な治療を受ければよい。

明治大正時代の日本人の平均寿命は40歳に届きませんでした。現在は80歳以上です。歯が痛くなって治療に見えた患者さんが60歳ならば、あと20年はその歯が使えるよう配慮しなければなりません。患者さんが10歳ならば70年持つように治療を施すのです。

正確なデータはありませんが、神経をとってしまった歯は神経を残した歯に比べ、再生力に欠けもろくなる。と歯科医師は口をそろえます。子どもの永久歯は生えてきたばかりでまだ根の先端が完成しておらず治療内容も複雑です。長い先を見越して治療にあたり。できるだけ神経を温存し、できるだけ削らない処置が理想です。

問題が起こってから治療をする、というような対症療法だけでは一生自分の歯で食べることはできません。「治療だけでお口の健康を維持するのは困難。予防に優るものはない。」というのが現代歯科医療の常識です。