お口に関する話

2010年1月アーカイブ

100年程前まで人類に麻酔という技術はなく、人々は神様に祈るしかありませんでした。 歯を抜くために最初に全身麻酔を行ったのも歯科医ですが、現在と異なり当初はリスクが高くどうやって安全に歯の治療をしようかと考案されたのが現在の注射による局所麻酔です。麻酔は嫌い!でも痛いのも嫌い!という方、是非お読みください。

1) 麻酔は何故必要なのか?

治療時の心理的な恐怖、緊張、痛みなどに耐えることは精神面、身体面に不調を来たす原因となります。歯科麻酔は、そういった苦痛を可能な限り緩和してあげるために、そして治療を安全に進めるために利用されています。なお、歯科治療における痛みの感じ方は人それぞれですので、歯科医師は適切な処置を行うために状況に応じた麻酔を適用しています。

2) 痛くなく麻酔注射を受けるために

お化け屋敷に入った時「いつ驚かされるかわからない」という心理が恐怖心を増大させ、ついつい大声を上げてしまうことはありませんか?麻酔注射も同様に「いつ射されるのか」などと構えてしまうとわずかな痛みでもそれが増幅されて大きな痛みへと発展することがあります。

私たちは、麻酔注射を行う際には患者さんにできるだけリラックスして、心理面に余裕を持っていただくことを心掛けています。たったそれだけで針を刺す時の痛みは意外にも軽減するものです。ただ、我慢がどうしても難しいといった場合にはシビレ薬(表面麻酔薬)を注射部位に塗布する方法もあります。ご相談ください。

3) 鎮静法の併用について

抜歯や手術などの外科的歯科治療においては患者さんが感じるストレスはかなり大きなものになります。そのため、高血圧、心臓病、糖尿病などの持病をお持ちの患者さんにとっては治療自体が大きなリスクを伴うものになります。このような場合、鎮静法を併用しながら局所麻酔をすることで安全に歯科治療を受けていただくことができます。また、鎮静法は恐怖心の非常に強い方にも適用されます。

若い人でも、ちょっと歯が痛かったりすれば痛い歯をかばって反対側で噛もうとしたときに相当の不便さを感じることがあると思いますが、その程度で若い人の体力が急激に衰えたりはしません。しかし高齢者では自分の口から噛んで食物をとれない状況はある意味緊急事態です。どうしてそうなのか?その対策にはどうすればいいのでしょうか?

  1. 噛めない危険信号
    人間の体の細胞は60兆個といわれますが、毎日2兆の細胞が代謝され入れ替わっています。この細胞の入れ替わり速度は若い人にくらべ老人は遅くなります。細胞のもとは食事から摂取するわけですから、飢餓状態に陥れば新しい細胞をつくる材料がなくなり最後には命を落とすことになります。高齢者が噛めなくなると急速に体力や筋力が衰え歩けなくなったり、食品を飲み込めなくなるなど危険な低栄養状態に追い込まれます。
  2. 噛むことの効果
    噛むことで顎の骨や筋肉が働いて血液の循環がよくなり脳内の血流量も増加します。結果として脳細胞も刺激され運動能力や生理機能も向上します。プロ野球選手がガムを噛んでプレーするのもこのためです。高齢になっても噛む機能が維持されることで転倒骨折や認知症やうつ状態などを予防する効果があります。また、噛むことで唾液の量も維持され抗癌作用や免疫力の増強も期待できます。
  3. 高齢になっても噛めるためには
    80歳になっても20本以上歯を残して自分の歯で噛めるようにという8020運動で推奨されるように若い時からの管理が必要ですが、8020達成者は年々増加傾向にあります。その一方で多くの歯を失ってしまった高齢者の方も少なくありません。噛めるようにすることは歯科医療の究極の目標といっても過言ではありません。老いも若きも健康長寿のために歯科医院で定期メインテナンスを受けましょう。