お口に関する話

子どもの歯科治療(1)

子どもの歯科治療をするのにあたり歯科医師の考えることは、その歯をあと何年間使うのか、ということです。乳歯か永久歯かでも治療内容は違いますし、永久歯では、子どもはおとなよりもその歯をより長い期間使う訳ですから事は重要です。自身の最大の技術を使って治療に当たります。

乳歯は1才頃から生え始め三才頃には上下合わせて20本の乳歯が生えそろいます。乳歯にはそれぞれ名前があって真ん中からABCDEと呼びます。
例えば右下の一番奥の乳歯は「右下E」といいます。6才頃にはEの後ろにさらに6才臼歯という名前の永久歯が上下左右4本生えてきます。これと同時期にAはその役目を終え、下から生えてきた永久歯に生え替わります。このあとBCDEは順次1〜2年おきに下から生えてくる永久歯に置き換わっていきますが、最後の乳歯Eは12〜14才まで使用します。
言い換えると早期にEを失ってしまうと、中学生になるまでそこには歯は生えてこないと言うことです。Eを早期に失った場合、6才臼歯は前方に異動して位置の異常が起きるため、あとから生える永久歯の萌出スペースがなくなることになります。
このことで、歯並びや噛み合わせの異常が起こると言われています。

乳歯はどうせ抜けてしまって生え替わるのだから、乳歯のむし歯は、痛くなければ治療は必要ない???

さあ、どうでしょう。乳歯の下で永久歯はまだ歯ではなく「歯胚」といって歯になる前段階の状態で待機しています。乳歯が抜け落ちるまでの間に長い時間をかけて徐々に永久歯は出来上がっていきます。

この時期に乳歯に大きなむし歯を作り、放置することで、乳歯の根を伝わってばい菌が永久歯胚に到達し、エナメル質の減形成や着色など永久歯が影響を受けることもあります。乳歯は、永久歯の萌出とともに根が先の方から吸収し短くなって最後には抜けてしまいます。

順調に根が吸収するためには、むし歯などで神経を失ったりしていない健全な乳歯が有利なのは明らかでしょう。

むし歯に対する国民の意識が向上し、最近で歯の全周がむし歯になった、いわゆる味噌っ歯の子どもは少なくなった。それでもむし歯の本数が多すぎる場合はむし歯の進行止め「フッ化ジアミン銀」(サホライド)という薬物を乳歯に塗る場合がある。サホライドはフッ素化合物なので、銀が沈着して真っ黒になるが、これでむし歯の進行を抑え、最終的に審美的な治療を受ければよい。

明治大正時代の日本人の平均寿命は40歳に届きませんでした。現在は80歳以上です。歯が痛くなって治療に見えた患者さんが60歳ならば、あと20年はその歯が使えるよう配慮しなければなりません。患者さんが10歳ならば70年持つように治療を施すのです。

正確なデータはありませんが、神経をとってしまった歯は神経を残した歯に比べ、再生力に欠けもろくなる。と歯科医師は口をそろえます。子どもの永久歯は生えてきたばかりでまだ根の先端が完成しておらず治療内容も複雑です。長い先を見越して治療にあたり。できるだけ神経を温存し、できるだけ削らない処置が理想です。

問題が起こってから治療をする、というような対症療法だけでは一生自分の歯で食べることはできません。「治療だけでお口の健康を維持するのは困難。予防に優るものはない。」というのが現代歯科医療の常識です。