お口に関する話

お口の健康維持

お口の健康を維持するためには、まず病気に罹らないための予防と、むし歯や歯周病の治療が終了してからのメインテナンスが重要です。予防とメインテナンスは、いずれも患者さん御自身が日頃心掛けるべき点と、歯科医院で受ける予防処置や指導、あるいはメインテナンスがあります。快適な食生活のため、歯科医院スタッフは、お口の健康維持を支えます。

Q一言で歯科健診といっても、年齢や健診場所など様々ありますよね。
A歯科健診には、学校健診や自治体などが行う1歳半、3歳児健診や40歳以上の方が対象で10歳毎の節目に健診の案内がある節目健診、企業や団体が行う事業所健診などがあります。
Q健診が進まない理由は?
A労働関連法に歯科健診が義務付けられていないことが理由の一つになると思います。これは、8020達成の大きな障害になっていると思われます。
平成22年に長野県歯科保健推進条例が、23年には国で歯科口腔保健の推進に関する法律が制定されました。その中には職場などでの歯科健診の機会の確保等がうたわれています。が、現実には費用の問題や罰則規定がないこともありなかなか行われていないのが現状です。
Q自分の歯を残すためにも健診は大事。節目健診の最初の年代、40歳の歯の本数はどのようになっている?
A先ほどお話しした平成22年の長野県歯科疾患実態調責では、お口の中の歯の本数(現在歯数といいます)が40歳代までの平均28.5本に比べ50歳代20.8本といきなり8本程少なくなっています。ちなみに、50歳代以降の平均では17.9本です。40代から50代の聞に8本も歯を失ってしまうわけで、これは大変なことです。
Q急激に減る原因は?
A一番はきちんとお口の管理!をされていないことだと思います。20代から30代までの方の歯科受診率、特に健診やブラッシング指導など予防的なものに対する受診率の低さ。(20代男性では受診率1%に満たないのが現実です。女性でも1.2%) 歯を失う原因は30代まではむし歯が、40代からはそこに歯周病によるものが加わります。歯周病の発病は20代から始まりますので、40代以降に歯を喪失しないためには20代からの管理が非常に大切になります。
この年齢の皆様に是非、定期的な歯科健診を受診していただきたいと思います。また健診で問題が見つかった場合はもちろん治療をしていただきたいですし、問題がなかった方でも、次の1年無事でいるために、お口の管理方法のアドバイスを、かかりつけ歯科医にうけていただきたいと思います。また、事業者の皆様には、就労者の方々の健康管理のために是非、歯科健診を取り入れていただきたいと思います。
Q最後に、もうすく東日本大震災から、2年となる。歯の治療をせずにいることは、大規模災害時にも問題になる。
A東日本大震災のような大きな災害では、避難所などでの集団生活等、普段と遠う環境におかれます。そういうストレスからお口の中に問題を起こす方が非常に多いということが分かっています。これらはその後に起こる全身疾患とも、非常に関係が深いといわれています。普段からの管理でそれを防げますし、問題が出てきても管理方法さえわかっていれば酷くならずに治すことができます。また、あってはならないことですが、意識不明の方や不幸にもお亡くなりになった方の身元の特定にお口の中の情報が非常に役に立ちます。これはDNA鑑定と同様に正確でかつ早くできます。そのためには対象になる資料がなければなりませんし、新しいもの、更新されたものがあることがとても大切です。
Q歯の痛みというと、まず思いつくのがむし歯。私もむし歯、経験しました。ご飯もおいしくない、仕事も集中できない。あの痛み、もうどうしようもないですよね......。そもそもどうしてむし歯になると痛むの?
Aむし歯の痛みは、甘い物がしみたり、食べ物が挟まった時の痛みによるもの。この痛みは、歯の中の血管や神経が充血したり化膿したりして圧力がかかることでひどい痛みになることが多い。
Qむし歯になった歯、痛みを忘れる時がある。このまま放っておいたら治るかも?先生のところに行かなくても大丈夫かも?と思うこともある。治療しなくても痛くなくなることがあるの......?
Aむし歯が進行して歯に大きな穴が空いて血管や神経が露出すると、ひどい痛みだったのが一旦痛くなくなり、食べ物がそこに触れた時だけ痛い状態になることもある。これは治ったわけではなくて症状が進んでいるだけ。Q:やはりむし歯は勝手に治るものではないんですね!気付かない間に進行しているなんて怖い......むし歯かな?と思ったらすぐに治療が必要ですね!
Qさて、歯自体の痛み、他に"知覚過敏"が考えられるそうですね。冷たい物がしみるイメージだが、実際はどんなもの?
A昔は歯の磨きすぎが原因といわれていたが、最近では歯ぎしりにより痛みが起こるといわれている。
Q歯ぎしりで痛みが起こる?どうして?
A歯と歯ぐきの境目辺りに、その力が集中しエナメル質の表面が割れて剥がれることが原因。急に冷たいものにしみたり、歯を磨いた時にしみたりすると知覚過敏のことがある。
Qむし歯や知覚過敏と歯自体が痛む場合についてお聞きしたが、ここからは歯ぐきの痛みについて。歯周病が多い?
Aはい。歯ぐきが磨けていないことで炎症が起こる歯周病は、歯石が付くと炎症がもっと深い所に起きて重症化していく。歯自体の痛みは、圧力がかかることで痛みが出るが、歯ぐきは少し位腫れても圧力がかからず、痛みが出にくい。
Q痛みが出にくいということは、放置しておくと重症化しやすい?
Aはい。さらに、歯周病の細菌は痛みを感じさせなくする毒素を出すため、ひどく腫れてから痛みを感じて気付くことが多い。この痛みは最初は鈍くて重い感じの痛みであることが特徴。
Q予防法は?
A歯石を歯科医院で定期的に取って、丁寧に磨くのが重要。
Q歯ぐきが痛む原因、他にもありますか?
A歯の根の先が化膿して痛むことがある。これは、むし歯がひどい場合に、神経を取ったまま放置するとできることが多く、骨の中が化膿するので圧力がかかり、痛みになることが多い。最初は重い痛みで、ひどくなるとズキズキする痛みになることもあります。更にひどくなると、骨を溶かして歯ぐきの方まで腫れることもあり、そうすると痛みが楽になって治ったように錯覚するが、これもむし歯と同じで症状が進んでいるだけ。
Q歯の根元が化膿するなんて知らなかった......。歯周病と歯の根元の化膿、痛みの違いは?
A両方ともに物を噛んだ時に痛みが出ますが、歯周病は歯を横から叩くと特に痛い。歯の根元の化膿による痛みは、縦に叩いた方が痛くなる。
Q歯の痛み、自分では何が原因でどこが痛んでいるのかハッキリとは分かりにくいもの。痛みが出たら、まずは歯科医院を受診するのがいいですね?
A歯の痛み、歯の回りの痛みは放置せずに歯科医院の早めの受診と定期的な健診が良い。今日お話しした以外にも親知らず・口内炎・あごの関節による痛みなど、痛みの原因はいろいろと考えられる。痛みは身体からの何らかのSOSなので放置せずまた、素人判断をせずに早めに歯科医院を受診して欲しいと思う。
Q口臭、私も気になります。にんにく料理を食べた時などはもちろんですが、普段からしっかり歯磨きしたりガムを持ち歩いたりしている。ちゃんとケアしているつもりなのにどうして臭うのですか?
A口臭の 8 ~ 9 割は、口の中の汚れや病気が原因であるといわれています。具体的に言いますと、磨き残しや歯周病、重症のむし歯が多い、舌苔(舌の表面に付いた白~淡黄色の汚れ)が大量についている、唾液の分泌量が減る、入れ歯が不潔な場合、口内炎や口腔ガンなどがある、などの原因が挙げられます。
Qケアしている"つもり"でも、実はまだ汚れが残っていたり、治療していないむし歯なども原因になるんですね。
A口の中以外では、鼻やのどの病気(副鼻腔炎、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、咽頭喉頭ガン)呼吸器系の病気(化膿性の気管支炎、肺ガン)消化器系の病気(食道ガン、胃ガン)、糖尿病、尿毒症、腎不全、慢性肝炎などが関連しているといわれています。
Q口臭の原因、食べ物による場合と、口の中全体の問題、それから内臓などに病気があることに関係しているかもしれない、ということですね。食べ物による臭いが原因の時はきちんと歯磨きをすれば良くなる気がしますが、歯周病など口の中に病気がある場合は、病状によって臭いに違いはありますか?
A先ほどお話しした口臭の原因で、最も多いのは歯周病です。軽度の歯周病(歯肉炎)ですと、口臭はほとんど認められませんが、重度の歯周病は歯周病菌が繁殖し、口臭が発生します。歯周病菌はたんぱく質を分解する酵素を持っていて、臭い物質を発生させます。これは、揮発性硫黄化合物といって、歯周病にかかった方の口臭では、血生ぐさい・魚や野菜が腐ったような臭いといわれるメチルメルカプタンの割合が高いことが報告されています。
Q歯周病を放っておくこと自体怖いですが、口臭の原因にもなるんですね。他の原因として先ほど教えていただいたように、胃など内臓に病気がある場合も、進行によって口臭が強くなることがありますか?
Aそうですね。口の中以外で口臭が発生する疾患の中には、特徴的な臭いが出てくるものがあります。肝硬変や肝臓ガンではアンモニア臭、その他、呼吸器や消化器のガン、糖尿病など、病状によっても臭いのタイプが異なります。
Qどこが悪いかによって臭いのタイプが違うんですね。
Aよく「胃が悪いと口臭が強くなる」と言われて、信じている方もいらっしゃるかと思いますが、実際に胃の病気が原因で口臭が発生することは稀といわれています。胃と食道の境目に噴門というところがありますが、そこは食物が通過する時以外は閉じているので、「ゲップ」以外では胃の空気が口の中に出ることはほとんどありません。
Qもうひとつ、口臭の原因としてよく聞くのが「ストレス」なんですが、これについてはどうなんですか?
Aストレスと口臭には関連があります。口臭が気になって不安がある方は、会話でストレスを感じることで、さらに口臭が強くなることが考えられます。ストレスによる口臭の悪化には、唾液の分泌が影響しています。唾液の分泌量は、成人では約1.5リットルと言われています。唾液にはいろいろな役割がありますが、口臭に関係することとしては、口の中を洗浄する作用、抗菌作用、粘膜の保護作用などがあります。
Qよく、緊張したりすると口が渇く感じがしますね?
Aストレスがある状態では、唾液量が減少します。そうなると、普段は唾液によって流されている汚れや食べカスが残って、口臭の原因になってしまいます。また、服用している薬(抗ヒスタミン薬、降圧剤、睡眠薬、抗うつ薬など)の副作用によって唾液の分泌が抑制されて、口の中の乾燥が起きている場合があります。このようなことも口臭の発生に影響があるといえます。ただし、自己判断で薬を飲むことを中止しないようにしてください。まず担当医に相談することが必要ですから注意してください。
Q歯がしみる症状、寒くなると風などで感じることもありますが、どうしてしみるのでしょう?
Aお口の中には熱い食べ物や飲み物、また氷、アイスクリームといった冷たいものも入ってきます。その温度変化は何十度にもなります。健康な歯でも極端な温度変化ではしみることがあります。同じものを口にしても、一時的にしみなくなったり、再びしみる場合は知覚過敏が考えられます。歯の神経が冷たい刺激や熱い刺激に対して過敏に反応し、しみるという感覚を引き起こしているわけです。歯の神経の反応は、体調、季節などによっても変わってきますので、しみたりしみなくなったりすることがあります。
Qしみた場合、すぐ受診したほうがいいのでしょうか?
Aむし歯があるのを自覚されている場合は早めの受診をお勧めします。歯科医院での適切な治療により、歯を守ります。歯はしみるけれどむし歯の自覚がない場合は、知覚過敏が考えられます。日常生活に差し障りがあるようでしたら歯科医院を受診して下さい。歯科医院では、知覚過敏の原因を探り、それに対処する治療やアドバイスをします。
Qでは、治療をする場合はどのようなことをするのですか?
A軽症の場合は、しみる場所、主に歯のつけ根ですが、その部分に薬を塗り込むことにより一層の膜を作って歯の神経に刺激が伝わりにくくします。歯の根元がえぐれてしみている場合は、その部分を埋めて刺激を遮断します。
Q歯ぎしりやくいしばりも原因の一つになるのですね?
A歯ぎしりやくいしばりがある方は、それが知覚過敏と関連しているか歯科医院で診ていただいて下さい。必要に応じて、歯ぎしり防止のための「ナイトガードというマウスピース」を入れていただいたり、くいしばりを防止するトレーニングを併用します。
Q日頃からできる予防法はありますか?
A先ず、丁寧な歯みがきを心がけて下さい。毛先が柔らかめの歯ブラシで、露出した歯のつけ根の表面についたプラーク(歯垢)を丁寧に取り除きます。決して力を入れてゴシゴシしないことが大切です。「しっかり磨こう」と気合いを入れすぎると、歯ブラシの刺激が加わりすぎてよくありません。優しく小さな動きで丁寧にブラッシングして下さい。歯ブラシの毛先がふれるだけでピリッとする場合は、知覚過敏の症状を抑える歯みがき剤の使用をお勧めします。これを使いながら柔らかめのブラシでそっと磨くようにすると、1~2週間で症状が改善することがあります。また最近の研究では、食後すぐの歯みがきが知覚過敏を起こしやすくすることが分かってきました。食後15分ほどたってから歯みがきすることで知覚過敏を防げる可能性があります。
Q歯がしみることは本当につらいことですね。
Aはい、しみるということは、歯が教えてくれている危険のサインとも考えられます。これを見逃さず、軽いうちに対処すると、ご自分の歯で美味しく楽しい生活を送ることにつながります。
Q3月に「長野県在宅歯科医療連携室」が開設しました。どんな背景があったのでしょうか?
A在宅療養中で歯科医療やお口のケアが必要な方が、「口から食べる」ことを続けていくには、歯科医師や歯科衛生士による細やかなバックアップが必要です。しかし、在宅で必要な歯科医療や口腔ケア指導が必要であるにも関わらず提供されないケースが多い。そんな方々にもっと、在宅で出来ることを知っていただきたいという願いから、長野県から委託されて長野県歯科医師会に「長野県在宅歯科医療連携室」を今年3月に立ち上げました。
Q在宅歯科診療はだれでも受けられるの?
A介護を受けている方や、何らかの理由で自力での通院が困難な方が対象です。
Qそもそも、在宅歯科医療とは?
A在宅歯科医療とは、自宅や施設などに居て自力での生活が困難な方に、ご自宅や施設に訪問をして歯科治療や口腔ケアの指導をすることです。家族、介護職、医療職、福祉職、ボランティアなどの協力や支援をいただき、「口から食べる」ことを続けていけるように、歯科医師や歯科衛生士も協力しながら、高齢者の方の「食べる楽しみ」を一生涯続けていただけるようにするための手段です。
Qその中でも、在宅歯科連携室では何をしていますか?
A連携室には歯科衛生士がおり、在宅での歯科医療や口腔ケア指導等を希望する方からの相談を受け付けており、お口のトラブルに対応します。歯に穴があいている、歯のかぶせものや詰め物がとれた、グラグラ動く歯がある、歯ぐきから血が出る、入れ歯の調子が悪い、食べ物が飲み込みにくい、食べているときむせる・咳き込むなど、お気軽にご相談ください。また、お住まいの場所に近い在宅歯科医療を実施する歯科診療所の紹介をしています。
Q実際のケアはどんなことをしているの?
A歯科医療の必要な方の状態に応じて診療の計画を立て診療します。むし歯や入れ歯を直すことで咬むための機能の改善、飲み込むための機能を支える口や口周辺の器官の維持・低下を予防するための訓練も行います。口から食べることを促し、低栄養や脱水を防ぎ、脳・胃腸に刺激を与えつづけることが、体力の回復や維持、意欲向上につながります。入れ歯を入れていることなどにより、発音する機能の低下を防止し、また改善することによりコミュニケーション能力も回復します。口腔ケアによりお口の中を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎などの原因となる口の中の細菌の数を減少させ、全身感染症の予防にもつながります。療養者の症状に応じて、必要な訪問回数が多くなることもあります。
Q費用はどれくらいかかるの?
A国民保険・社会保険では一般の医療保険の一部負担金と同じ取り扱い。後期高齢者医療制度では医療費の一割(または三割)が一部負担金に。障害者・生活保護では各市町村の減免と同じ取り扱いになりますので最寄りの市町村役場にお問い合わせください。介護保険では在宅の場合、居宅療養管理指導費が介護保険の適用となります。以上費用については、治療内容等によって異なりますので、詳しくは往診の際にご確認ください。
Q今日のお話で在宅歯科の存在を知った方もいると思う。まず、どこに相談すれば?
A長野県在宅歯科医療連携室まで。問合せ先は、TEL 026-226-4794までどうぞ。受付時間は、平日(土・日・祝祭日を除く)午前10時から午後4時まで。お口の中の不調や入れ歯の不具合、食事が飲み込みにくいなどの症状がありましたらお気軽にご相談ください。
Q急いでいる時などかなり適当になってしまいますが、普段から意識することを教えて下さい。
A歯磨きをする時、28本の歯、すべてをブラッシングすることを心掛けて下さい。1本ずつ丁寧に磨くことが大切です。むし歯でやってくる患者さんをみてみると、日常生活の「甘いものの食べ方」に加えて「歯の磨き方」に問題がある場合が多いと思います。
Q「甘いものの食べ方」ですが、どんなことに気をつけると良いですか?
A長時間、口の中に含む食べ方に気をつけて。アメをなめ続けたりやチョコレートを食べ続けたりすると、むし歯菌が造る酸により歯が非常に溶けやすくなります。
Q「歯の磨き方」について、むし歯にならないためにはどんな磨き方をしたら良いですか?
Aまずは、歯磨き粉の選び方に注意してみて下さい。歯磨き粉の成分の中で、むし歯の予防に効くものがあります。「MFP:モノフルオロリン酸ナトリウム」と「NaF:フッ化ナトリウム」の2つ。まとめてフッ素化合物といっています。これを含んだ歯磨き粉を選ぶとよいと思います。
Q歯磨き粉にもその名前が書いてあるんですか?
A英字表記でMFP(エムエフピー)か日本語でモノフルオロリン酸ナトリウム、もうひとつも英字表記でNaF(エヌエーエフ)か日本語でフッ化ナトリウムと書かれています。
Qその2つのフッ素化合物がどうしてむし歯に効くんですか?
Aむし歯の特性として、完治することはありません。むし歯になった部分は、歯と別の人工物で詰めることに成ります。食べ物の糖分によって歯を溶かす酸が発生し、酸によって歯は溶けていくと、むし歯になるのだけれど、フッ素は歯を溶け難くしたり、その溶けた歯を修復していく力があります。ですから、むし歯の進行を防ぐことができます。
Q磨き方のポイントはありますか?
Aポイントは、まず「フッ素化合物」を十分に働かせるようにすること。磨くときは歯の全体に歯磨き粉が広がるようにして、泡立つように心掛けて磨いて下さい。
Qそのまま何分くらい磨けばいいんでしょう?
A少なくとも2分は磨いて下さい。28本すべてをブラッシングできるまで、最低2分以上は必要です。フッ素化合物を含まない歯磨き粉の場合や歯磨き粉を使わないで磨く場合は、もっと時間をかけて磨く必要があります。
Qそのほかのポイントは?
A歯磨きあとが大切。「フッ素」が歯に作用している時間を長くするために、ブクブクうがいは極少量の水1回にして下さい。フッ素をなるべく長くお口の中に留めておくために、歯磨き後は2時間程度、飲食を控えて下さい。
Qむし歯に作用する「フッ素化合物」の成分ですが、もちろん体に悪影響はないんですか?
A歯磨き粉に入っている量では、まったく問題はありません。身体への影響などありませんので、幼児から高齢者まで幅広く使えます。幼児は歯が4~5本生えてきた時期から使っていただくと、むし歯予防につながると思います。
Q最後に、今、むし歯で悩んでいる方、治療中の方へアドバイスをお願いします。
Aフッ素化合物入りの歯磨き粉をちゃんと使えたとしても、日常生活の甘いものの食べ方が改善されないとフッ素でもむし歯を防げない場合がありますから気をつけて下さい。私も甘いものが好きなので、気をつけます。今日のお話を聞いて、普段の磨き方を見直してみようと思いました。
Q歯の痛みというと、まず思いつくのがむし歯。私もむし歯、経験しました。ご飯もおいしくない、仕事も集中できない。あの痛み、もうどうしようもないですよね・・・。そもそもどうしてむし歯になると痛むの?
Aむし歯の痛みは、甘い物がしみたり、食べ物が挟まった時の痛みによるもの。この痛みは、歯の中の血管や神経が充血したり化膿したりして圧力がかかることでひどい痛みになることが多い。
Qむし歯になった歯、痛みを忘れる時がある。このまま放っておいたら治るかも?安齋先生のところに行かなくても大丈夫かも?と思うこともある。治療しなくても痛くなくなることがあるの・・・?
Aむし歯が進行して歯に大きな穴が空いて血管や神経が露出すると、ひどい痛みだったのが一旦痛くなくなり、食べ物がそこに触れた時だけ痛い状態になることもある。これは治ったわけではなくて症状が進んでいるだけ。
Qやはりむし歯は勝手に治るものではないんですね!気付かない間に進行しているなんて怖い・・・むし歯かな?と思ったらすぐに治療が必要ですね!
さて、歯自体の痛み、他に"知覚過敏"が考えられるそうですね。冷たい物がしみるイメージだが、実際はどんなもの?
A昔は歯の磨きすぎが原因といわれていたが、最近では歯ぎしりにより痛みが起こるといわれている。
Q歯ぎしりで痛みが起こる?どうして?
A歯と歯ぐきの境目辺りに、その力が集中しエナメル質の表面が割れて剥がれることが原因。急に冷たいものにしみたり、歯を磨いた時にしみたりすると知覚過敏のことがある。
Qむし歯や知覚過敏と歯自体が痛む場合についてお聞きしたが、ここからは歯ぐきの痛みについて。歯周病が多い?
Aはい。歯ぐきが磨けていないことで炎症が起こる歯周病は、歯石が付くと炎症がもっと深い所に起きて重症化していく。歯自体の痛みは、圧力がかかることで痛みが出るが、歯ぐきは少し位腫れても圧力がかからず、痛みが出にくい。
Q痛みが出にくいということは、放置しておくと重症化しやすい?
Aはい。さらに、歯周病の細菌は痛みを感じさせなくする毒素を出すため、ひどく腫れてから痛みを感じて気付くことが多い。この痛みは最初は鈍くて重い感じの痛みであることが特徴。
Q予防法は?
A歯石を歯科医院で定期的に取って、丁寧に磨くのが重要。
Q歯ぐきが痛む原因、他にもありますか?
A歯の根の先が化膿して痛むことがある。これは、むし歯がひどい場合に、神経を取ったまま放置するとできることが多く、骨の中が化膿するので圧力がかかり、痛みになることが多い。最初は重い痛みで、ひどくなるとズキズキする痛みになることもあります。更にひどくなると、骨を溶かして歯ぐきの方まで腫れることもあり、そうすると痛みが楽になって治ったように錯覚するが、これもむし歯と同じで症状が進んでいるだけ。
Q歯の根元が化膿するなんて知らなかった・・・。歯周病と歯の根元の化膿、痛みの違いは?
A両方ともに物を噛んだ時に痛みが出ますが、歯周病は歯を横から叩くと特に痛い。歯の根元の化膿による痛みは、縦に叩いた方が痛くなる。
Q歯の痛み、自分では何が原因でどこが痛んでいるのかハッキリとは分かりにくいもの。痛みが出たら、まずは歯科医院を受診するのがいいですね?
A歯の痛み、歯の回りの痛みは放置せずに歯科医院の早めの受診と定期的な健診が良い。今日お話しした以外にも親知らず・口内炎・あごの関節による痛みなど、痛みの原因はいろいろと考えられる。痛みは身体からの何らかのSOSなので放置せずまた、素人判断をせずに早めに歯科医院を受診して欲しいと思う。
Q口の中の病気というと、むし歯や歯周病がまず思い浮かびますが、癌になることもあるのですか?
Aはい、口の中に癌ができること自体あまり知られていないのが現状です。口腔癌は発見しやすく、早期発見、早期治療によってほとんど障害を残さずに治療ができる病気ですが、進行すると食事や会話に著しく障害が生じます。最悪の場合は口腔癌で命を落としてしまうこともありますし、近年この口腔癌の死亡者が急増しているというデータも出ています。
Q進行するまで気付きにくいということですか?
A口は内臓などと違って直接見ることができるので発見しやすい癌だと言えるのですが、かなり進行するまで放置されることが珍しくありません。一般の方々に、口腔癌についての知識があまりないことが原因と考えられます。
Q知っておくことが大事ですね!口腔癌になりやすい場所ってあるのですか?
A一番多いのは舌にできる「舌癌」です。その次に歯茎にできる「歯肉癌」、その他にも下顎の歯茎と舌の間にできる「口腔底癌」、頬の粘膜にできる「頬粘膜癌」、上顎の内側にできる「口蓋癌」などがあります。
Q発見しやすいというお話だけど、どうしたら発見できるのですか?
A口の中は鏡で見てチェックをすることもできますし、感覚も鋭いので、見た目や感覚で発見することが可能です。例えば、口の中にしこりや腫れができていたり、口の中の粘膜が変色している部分があったりする場合、注意が必要です。口の中に出血があったり、口内炎や抜歯の痕がなかなか治らないのも要注意です。
Qふだんから口の中をチェックする癖をつけておくとよさそうですね?
A歯磨きの後にチェックするのがお勧めです。その他、見た目には変化がなくとも、食べ物が食べづらい、頬や舌を動かしづらい、口の中がしびれたりする、などの場合も癌が原因の場合があります。少しでも異変に気づいたら、早めに受診してください。放置しておいて重症化して、後遺症が残ったり、死にいたる危険性もあります。
Q口腔癌にならないよう、日常生活の中で気を付けることはありますか?
Aまずはタバコ、お酒を控えることです。この2つは口腔癌の最大のリスクで、たばこを吸う人は吸わない人の約7倍、飲酒の習慣のある人は、ない人に比べて約6倍、口腔癌が発生するという調査結果があります。また、たばことお酒には相乗効果があるので、毎日たばこを吸ってお酒を飲む人は、口腔癌発生のリスクが高くなります。
Q他の病気の予防にもつながりますもんね。他には何かありますか?
Aその他にも、口の中が傷つくことで口腔癌の危険性が高まると指摘されていますので、壊れた入れ歯や合わない入れ歯、壊れた被せ物などを放置せずに治療するようにしましょう。また、歯磨きやうがいなどをして口の中を清潔に保つこと、偏食せずに栄養のバランスのとれた食事をすることも大事です。
Q普段の生活からの心がけ、そして、お口のチェックが口腔癌の予防、そして早期発見につながるんですね?
A一生楽しく食事をしたり、会話をしたりするためにも、ぜひ普段から心がけてください。また、かかりつけ医を持って定期的な診察を受けることが、早期発見、早期治療につながります。ぜひ定期的な受診をお勧めします。
Q健やかな口と書く「健口体操」。体操すると、どんな効果が見込めるのか教えて下さい。
A唾液がよく出たり、舌が滑らかに動くようになり、食べ物をごっくんと飲みやすくなります。嚥下障害の予防にも効果があります。また、言葉をハッキリ発音させる効果もあるといわれています。
Q美容効果もあるそうですが?
A口周りの普段使っていない筋肉を使って体操することで「小顔」 に近づけるといわれています。また、鼻の横から口元にある、ほうれい線を薄くする効果もあるといわれています。
Q誰でも取り組める体操なんですか?
A子どもから高齢者まで楽しくできる体操です。地域によっては介護予防事業などでも取り入れられているところがあります。

<実際にやってみよう>

Q何から始めるんですか?
Aまずは、リラックスすることから始めましょう。首を横に倒す運動や、肩を上下に動かしながら体をリラックスさせてみて下さい。決して無理をしないように自分の体に合わせてやってみて下さい。
様々な健口体操のうち、今日は2つ教えていただきます。

顔全体の体操【1】

Qまず顔全体の体操について、手順を教えて下さい。
A顔を中心に持っていくような感じで目と口をグッと閉じます。その時に手もグーにして握ってみて下さい。次に、目・口・手をパッと開きます。鼻の穴も開くようなイメージです。3 回やってみましょう!
「グーッ!ッパ!」 × 3 回

顔全体の体操【2】

Q次に口元に効果がある健口体操を教えて下さい。
A口角を上げるための体操です。「ひぃ~ふぅ~みぃ~」 と言いながら、口角を上げることを意識してみて下さい。最後の「みぃ~」 を、私が伸ばしますから、それに合わせて頑張って下さい。それではいきます。
「ひぃ~ふぅ~みぃ~」
Qちょっとした時間に、すぐ実践できる健口体操を、生活習慣の中に取り入れていきたいですね?
Aぜひ取り入れていただきたいです。口の周りの筋肉を動かすと、表情がとても豊かになったり、言葉がはっきりしゃべれるようになったり、また、食事のときに、飲み込みやすくなったり、スムーズに食事ができる効果が期待されますので、ぜひ健口体操に取り組んでみて下さい。今紹介したのはごく一部ですが、いろいろなところでチャレンジしてみて下さい。
Q口の状態が体の健康状態を表しているということ?
Aそうです。全身状態の異常をいち早く示し、知らせてくれるのが口の中なんです。歯肉の色や張り、舌や粘膜の色や形、唾液の様子、むし歯や歯周炎の程度もすべて身体や生活習慣の表れ。つまり、口は身体の健康状態を写し出す鏡なんです。健康な方は健康な口の中、体調を崩された方は崩されたなりの口の中になっています。
Qどんな生活を送っているのか口を見れば分かってしまう?
A運動不足や寝不足、栄養バランスが崩れた状態が長く続いていると、生活習慣病が起こってきます。生活習慣の乱れが原因となった慢性的な疾患が生活習慣病です。その全身的な生活習慣病も口の中に症状として現れてきます。
Q生活習慣病というと、糖尿病とか高血圧など。どんなこと?
A糖尿病では舌の苔の様子が変化し独特な口臭がでてきます。高血圧では歯肉の色が変わり赤黒くなってきます。これはほんの一例ですが、むし歯や歯周炎も生活習慣病のひとつであり、生活習慣の乱れという同じ原因で起こってきているのです。
Q嗜好品も関係してきそう?
Aそのとおり。たとえば、喫煙の習慣は末梢血管の血流量を減少させる。そのために、免疫力が低下し歯周炎が増え、歯肉にもメラニン色素が沈着し、きれいなピンク色の歯肉ではなくなってしまいます。また、糖尿病や貧血の方にも歯周炎を起こしやすい傾向があります。
Qそれから、口の中と体のゆがみも関係があるそう?
A歯は身体を支えています。身体の歪みが噛み合わせを変化させる。生活習慣からくる姿勢の歪みは噛み合わせのバランスを崩し、左右の均等噛みができなくなることもあります。噛む力は大きな力ですから、噛み合わせの強くあたる歯に症状を出してしまいます。他にも顎関節症や肩凝り・片頭痛などの不定愁訴の原因になることもあります。
Q歯ぎしりも関係している?
Aストレスが強いほど歯ぎしりや喰いしばりがひどくなる傾向があります。必要以上に強く噛みこむことは歯や歯の噛み合わせを壊していくことに繋がります。これは身体の影響だけでなく、精神的な要素も口の中に現れることを示しています。
Q改善するためには、生活習慣の見直し、それから歯を磨いて口の中をきれいにすること?
Aそうです。ブラッシングの大きな目的は歯垢の除去です。歯の表面に付着する歯垢の中には 1g当たり1,000億以上の細菌が生きており、その種類も300~400種と言われます。これらの細菌はお一人お一人の生活環境で数や種類が決まってくるのです。
Q数が違うのは分かるけれど、種類も違う!?
A甘い食べ物の多い方の口の中には、甘い食べ物の好きな細菌が増えてくる。これが砂糖を栄養にして酸を作るというむし歯に関係した細菌。ですから砂糖の摂取量の多い方はむし歯に対するリスクが高くなるわけです。
Qだからこそ、歯を磨いて細菌を減らすことが大切?
Aそうです。口の中の清掃状態が悪いと歯垢の量が増える。それに応じて細菌の数が増える。汚れた唾液を間違って肺に飲み込めば、誤嚥性の肺炎のリスクが上がる。全身の体調が崩れれば抵抗力が下がる。その結果、口の中の慢性炎症を起こしている細菌の勢力が増大して、感染が悪化し炎症が進んでしまいます。
Q気になる点がある人は、歯科医院に行って相談する?
A困った時だけの歯科医院でなく、健康の維持増進のために歯科医師と仲良くなってください。口の中のケアや治療によって疾患や炎症に対応し、生活の質を向上させて、快適な生活を送ってください。そして、私は健康だと思っている方でも、口の中の変化をいち早く知って大事に至らぬうちに、生活習慣・生活環境を整え、健康寿命を長く保って、楽しく有意義な人生を送りましょう。今日は口から始まる健康を考えてみてください。

<<2013年6月>>

            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30