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家庭の医学辞典

歯の健康相談

かしこいお母さんの乳歯管理(1)



歯はこんなに早くできる


「乳歯」がはえてくるのは、ほぼ生後6ヵ月ごろからですが、この歯の芽(歯胚)は妊娠して約6~7週めころからでき始めます。 妊娠したことがわかるのは、早くて4~5週めですから、受胎を確認したころには、もう歯胚が形成されていることになります。

6~10週の間に、将来の乳歯の数と位置に合わせて、上あごに10個、下あごに10個、 合計20個の乳歯のつぼみが急速に並びます。このときは、まだ細胞の集まりですが、ほぼ4ヵ月めごろから、 ここにカルシウム分の沈着(石灰化)が起こり始め、次第に「硬い歯」としての姿を現わすようになります。

また、このころにはすでに、大人の歯である「永久歯」の芽もでき始めています。 出生時までには合計16個の歯胚が形成され、残りは生まれてからということになります。永久歯の石灰化は、 出生時から始まることが知られており、高校生時代にそれが完了するといわれます。

このように、妊娠中から生後にかけて、歯は長い期間を経て成長していくのです。したがって、 丈夫な歯をつくるためには、妊娠中に母体が摂取する栄養と、生後子どもが摂取する栄養の両側面から考える必要がありそうです。 特に、歯の基礎づくりは妊娠初期からスタートするのですから、お母さんの妊娠中の食生活は、 子どもの歯にも大きな影響を与えることになります。

乳 歯
歯種
歯胚形成
石灰化開始
歯の完成

乳中切歯

妊娠 7週

妊娠4~4 1/2カ月

1 1/2歳

乳側切歯

妊娠 7週

妊娠 4 1/2カ月

1 1/2~2歳

乳犬歯

妊娠 7 1/2週

妊娠 5カ月

3 1/4歳

第一乳臼歯

妊娠 8週

妊娠 5カ月

2 1/2歳

第二乳臼歯

妊娠10週

妊娠 6カ月

3歳


永久歯
歯種
歯胚形成
石灰化開始
歯の完成

第一大臼歯

妊娠3 1/2~4カ月

出生時

9~10歳

中切歯

妊娠5~5 1/4カ月

生後3~4カ月

9~10歳

側切歯

妊娠5~5 1/2カ月

生後
上あご10~12カ月
下あご 3~4カ月

10~11歳

犬歯

妊娠5 1/2~6カ月

生後4~5カ月

12~15歳

第一小臼歯

出生時

1 1/2~2歳

12~13歳

第二小臼歯

生後7 1/2~8カ月

2~2 1/2歳

12~14歳

第二大臼歯

生後8 1/2~9カ月

2 1/2~3歳

14~16歳



歯のはえる時期、抜ける時期

乳歯の芽は、あごの骨の中で歯としての形をととのえながら成長し、はえる時期を待っています。 やがてタケノコが芽を出すように、歯ぐきを破って白い顔を出してきます。

「ねえ、お父さん、歯がはえてきたわよ!」とお母さんが喜びの声をあげるのが生後6ヵ月ごろで、 下あごの前歯が同時に2本出てくるのが普通です。赤ちやんが何だかご機嫌が悪くなって、よだれを流したり、 布を咬んだりしているうちに、歯ぐきに真珠のような白いふくらみを見つける、というわけです。

次いでその左右にはえ、同じころ上あごからも前歯が出てきて、だんだんに奥のほうへとはえそろっていきます。

合計20本の乳歯が萌出を完了するのが、満1歳半から2歳半くらいの間です。両親が一喜一憂するこの乳歯の生命は意外と短く、 小学校に入学する前後には、もう前歯のほうから永久歯にはえかわり始めます。また、この時期よりも少し前に、 初めての永久歯である第一大臼歯が一番奥の乳臼歯の後方にはえてきます。これは、 6歳ごろ萌出するので6歳臼歯とも呼ばれています。

こうして、小学校在学中には、ほとんどの乳歯が永久歯と交替して、中学校入学前後には永久歯列が完成します。

しかし、これはあくまでも平均的なもので、歯がはえる時期や順序には、かなりの個人差があります。 生後3ヵ月めでもう乳歯がはえてくるような気の早い赤ちやんもいますし、お誕生日近くまではえてこないゆっくり型もいます。 歯がはえるのが遅いといって心配されるお母さんがありますが、平均的な時期より6ヵ月くらい前後することはよくあることで、 遅いからといって知能の発育も遅いのでは、などと心配する必要はありません。お誕生日をすぎても、 まったくはえてこないという場合には、歯科医院で歯の芽があるかどうか、レントゲン検査をしてもらうとよいでしょう。

ごく稀なことですが、生まれたばかりの赤ちやんの下あごに歯がはえていることがあります。これを先天性歯、 あるいは出産歯とか鬼歯と呼び、日本人では千人に1人くらいの赤ちやんに見られます。舌の内側のヒダに傷をつくったり、 授乳時の障害になるようでしたら、口腔外科の専門医か歯科医で診査を受けてください。

また、乳歯の一部が先天的に欠如していることがあります。これは下あごの前歯に多く見られますが、 のちに続いてはえてくる永久歯の欠如をともなうこともありますので、心配ならば歯科医に相談してください。 とはいえ、歯の数が少したりないからといっても、ほとんど障害になることはありませんし、他人も案外気がつかないものです。




よい歯は妊娠中の食生活から

丈夫な赤ちやんを生むためには、妊娠中の栄養摂取が大切であることはいうまでもありません。 人間の健康は胎児期が出発点ですから、お母さんの責任は重大なものとなります。 歯についてはカルシウムだけが強調されがちですが、これは誤りです。歯をつくるのに欠かせない栄養素としては、 タンパク質、ビタミンA、D、B1、B2、C1、ニコチン酸、鉄、ヨウ素、マンガン、亜鉛、フッ素などがあり、 歯の大部分をつくる石灰分がカルシウムとリンから成り立っているのです。カルシウムの摂取が十分でも、 リンのとり方が不十分だと逆にカルシウムの吸収も悪くなることがわかっており、そのバランスが重要であるといえます。

ここでよく考えていただきたいのは、これらの栄養素はすべて健康な体をつくるために必要不可欠なものであり、 特別丈夫な歯をつくるためだけのものではない、ということです。歯は、私たちの体をつくっている器官の1つにほかならないのですから、体にとってよい栄養は歯にとってもよい、ということになります。もちろん、その逆のこともいえるわけです。

では、なぜあえて「よい歯は妊娠中の食生活から」という項目をここでもうけたのでしょうか?  それは、歯には次に述べるような特殊な事情があるからなのです。

すなわち、歯の成長と発育には、他の器官とくらべて、妊娠初期というきわめて早い時期にスタートし、 比較的短い期間で完成してしまう、という特殊性があるのです。しかも、いったんできあがってしまうと、 歯にはほとんど新陳代謝がないので、あとからいくら必要な栄養素を補っても歯はとり入れてくれません。 ですから、歯の発育期、とりわけ妊娠中に、栄養を含めた環境が悪いと、 その悪影響は歯の質にまで反映して永久にとり返しがつかないことになってしまいます。 出生後に成長する歯についても同じことがいえます。

お母さんの妊娠中の食生活が、子どもの歯の運命をも左右するのだということをおわかりいただけたでしょうか。


近ごろ若い女性は、美容を重んずるあまり、正しくない食事制限をし、 このために貧血症など健康がむしばまれていることが危惧されています。不合理なカロリー制限は、 栄養摂取のバランスをくずしてしまいかねません。また、加工食品の大量消費によって、 カロリーは満たされているものの栄養バランスが極端に悪くなっているのも気がかりです。 このような女性が妊娠すると、母体の健康を害するばかりか、胎児にも重大な悪影響を与えることは容易に予測されるところです。 正しくバランスのとれた食生活が、健全な母体の基礎をつくり、健康な赤ちやんを育て、 その結果として丈夫な歯ができあがると考えるべきでしょう。

もう1つ注意していただきたいことがあります。それは、出産によって妊婦は母体としての役割を終えるのではない、 ということです。子どもは離乳期まで、お母さんから「お乳」という成長の資源を求めるのですから、 この時期までを母体と考えるのが妥当です。

幼児期のむし歯予防は、「食べるものに気をつけること」が第一であるといえます。そういう意味でも、結婚したら、 健康一家となるために、食生活について改めて考え直してみる必要があるのではないでしょうか。 健康な食生活を営んでいるお母さんの子どもには、むし歯はできにくいのです。もちろん、お父さんの協力も欠かせません。




お母さんは何をどう食べたらよいか


まずカルシウムについて-。

これは赤ちやんの歯や骨に必要なだけではなく、妊娠中のお母さんにとっても大切なものです。 妊娠中のカルシウム不足は、感情の不安定を招きやすく、つわりによる不快感をましてしまうので、 妊娠前からこれを十分にとることが必要です。また、乳歯の石灰化は妊娠中に始まりますから、お母さんのカルシウム摂取量は、 やがて生まれてくる赤ちやんの歯質にも大きな影響を与えます。

日本人は、1日あたり600ミリグラムのカルシウムが必要だといわれていますが、 最近の加工食品を主体とした食生活では慢性的に不足しがちです。しかも、妊娠中や授乳期には、 普段の2倍のカルシウム量が必要とされているのです。十分な量のカルシウムをとるために、 意識してこれを豊富に含んだ食品を食べることが必要です。

しかし、カルシウムをたんに2倍とれば丈夫な歯がつくられる、というわけではありません。 カルシウムが歯によく沈着するためには、ビタミンDやリン、タンパク質などが必要なのです。 他の栄養素と一緒に摂取したとき初めてカルシウムとしての機能が発揮されることを忘れてはなりません。


では、どんな食品にカルシウムが多く含まれているのでしょうか。代表的なものとしては、小魚や牛乳、乳製品があげられます。 特に現在、食卓から姿を消しつつあるニボシ、メザシなどの小魚は骨ごと食べることができ、豊富なカルシウムを含んでいます。 さらに、脂質、タンパク質、リン、フッ素、ビタミンDなどを多く含んでおり、理想的な「妊婦食」といえます。 このような日本古来の優良食品を、もう一度見直してみる必要があるのではないでしょうか。 牛乳、チーズ、ョーグルトなどにもカルシウムはたくさん含まれていますから、これらをとりまぜて食べるようにしましょう。

また、ビタミンやミネラルを多く含むものに有色野菜があります。ホウレン草、 キャベツなどの菜類やカブやダイコンの葉で代表される有色野菜は、これらの栄養素が豊富なだけでなく、 繊維に富んでいるので消化を助けることになります。生野菜が一見よいように思われがちですが、 生のままでは食べる量が少なくなってしまいます。多少の栄養分が破壊されるとしても、 煮物にして大量に食べるほうがその点で効果的といえます。

そのほか、良質のタンパク質源としては、肉類、卵、魚、豆腐に代表される豆製品、牛乳などがあげられます。

インスタント食品に代表される加工食品には、栄養のバランスの悪いものが多く、こうしたものばかり食べていると、 ただでさえ不足しがちなビタミンやミネラルを減少させてしまいます。母体だけでなく、赤ちやんの発育、 ひいては歯の発育に悪い影響を与える恐れがあり、偏った食生活は考えものです。加工食品を利用するにしても、 自然の恵みである魚、肉、野菜、海藻、豆類、芋類をできるかぎり「手づくり料理」として食べたいものです。






赤ちやんの歯のチェックポイント

1.食事のチエック

(1)母乳を中心にしているか。粉ミルクに砂糖を加えていないか。
(2)ダラダラと哺乳していないか。寝る前の授乳がくせになってしまい、飲まないと眠ってくれないということはないか。
(3)離乳食に甘味を加えていないか。
(4)食事の時間は定期的か。ダラダラ食いをさせていないか。食事やおやつの間隔を、最低でも2時間はあけているか。
(5)歯がはえてきたら、キュウリやニンジン、セロリなどの硬い野菜を与えているか。軟らかい食品や歯にくっつきやすい食品に偏っていないか。

2.食後の歯の清潔チェック

(1)食べ終わったら白湯でブクブクうがいをさせているか。
(2)歯についた食べかすをとり、プラークをガーゼや綿棒でふいてあげているか。③赤ちやん用の歯ブラシを与え、食後にそれで遊ばせているか。

3.生活のチエック

(1)赤ちやん専用の歯ブラシとコップを用意し、歯磨きの習慣づけを早めに開始しているか。
(2)お母さんが、赤ちやんの歯磨きをすることに慣れてきているか。
(3)毎食後、お母さんがきちんと赤ちやんの歯をきれいにしているか。
(4)外出や旅行のときにも、ガーゼ、綿棒、歯ブラシを用意して、日常とかわりなくやっているか。
(5)かかりつけの歯科医へ行って、定期的に検査をしているか。

以上の点を毎日チェックしてみましょう。
むし歯予防は、赤ちやん時代から実践することが大切なのです。



磨いてあげよう赤ちゃんの歯

1.歯がはえる前
 歯がまだない時期なので、むし歯の心配はいりませんが、はえたあとの歯磨きを導入しやすくするために、お口の中のさっぱりした感覚を覚えさせましょう。この感覚を早期にもたせることは、あとあとに大きく影響します。離乳食を与えたあとに白湯を含ませるだけでも十分な清潔効果があります。

2.下の前歯がはえたら
 赤ちやん専用の歯ブラシをもたせて遊ばせましょう。磨くまねだけでも自然に汚れがとれてくるものです。また、離乳食を食べさせた直後にお母さんの指先にガーゼを巻いて歯をふいてあげたり、綿棒で汚れをこすりとってあげるのが効果的です。食後に白湯を飲ませることも忘れないようにしましょう。

3.上の前歯もはえてきたら
 この時期から、お母さんによる「歯ブラシ磨き」を始めてください。上の前歯は一番むし歯になりやすいところですから、特に大切です。ただし、この場所の歯ぐきは敏感なため、乱暴にやると痛みを感じやすく、赤ちやんはいやがりますから、そっと歯をふく程度にして徐々に慣らすようにしてください。また、赤ちやんは口をいじられるのを嫌いますのであまり無理じいしないで、機嫌のよいときに手短かに行なうようにしましょう。

4.奥歯がはえてきたら
 本格的なブラッシングを開始しましょう。奥歯の咬む面は複雑な溝が多く、食べかすやプラーク(歯垢)がたまりやすいので、ゴシゴシやることが必要です。ただし、むやみに大きく歯ブラシを動かしても、細かいところがうまく磨けませんし、歯ぐきに傷をつけてしまうこともあります。歯ブラシを細かく2センチぐらい)振動するようにして使用してください。赤ちやんの歯磨きには歯磨き剤は必要ありませんし、使うとかえってやりにくくなります。このとき、お母さんは正座して赤ちやんの頭を膝の上にのせて、口の中をのぞきやすい姿勢で行なうことが大切です。




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