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家庭の医学辞典

歯の健康管理

フッ素とむし歯予防




フッ素とは何か

有史以来、現在に至るまで、地球上に広く存在する自然物の中で、塩素やヨウ素、臭素と同じくハロゲン属の元素である「フッ素」は、人体中はもちろん、地殻、海水、河川、植物、動物など、ありとあらゆるものに必ず含まれてきたものです。したがって、フッ素が含まれていない飲食物は、この地球上には存在しません。そして、このフッ素は、歯の質をよくし、むし歯に対する抵抗性を高める唯一の物質として認められているのです。

このフッ素を、むし歯予防に利用する方法には様々なものがありますが、主として「全身的利用法」と「局所的利用法」に大別されます。全身的利用法には、水道水にフッ素を添加する方法、食塩などの必需品に含有させる方法、錠剤に含有させる方法などがあります。また、局所的利用法には、フッ素水による洗口法、フッ素水を歯面に塗布する方法、歯磨き剤などに含有させる方法、などがあります。水道水にフッ素を添加する方法が世界中の主流ですが、とりわけ日本では、フッ素による洗口法が多くとり入れられています。

いずれにせよ、歯ブラシでむし歯の原因を除去する方法や、甘味制限で代表されるようにむし歯の原因となる食べ物の摂取制限などは、あくまでも個人を対象とした方法です。したがって、個人の意志の強弱によって、その効果も大きく左右されることになります。ですから、その指導は、あくまでも個人を対象としたマンツーマン方式をとりながら、同時にその背景には教育的指導をも含めた接し方も必要と思われます。これは「個人衛生」の典型といえるでしょう。これに対して、フッ素水による洗口法は、逆に「公衆衛生」の典型といえます。個人の意志とはかかわりなく、社会の中で(学校という立場が多いのですが)集団的に実施する方法だからです。




フッ素のむし歯予防作用

歯の質をよくしてむし歯に対する抵抗性を高めることのできる物質としては、今のところフッ素だけしかわかっていません。

現在までに解明されている、むし歯を予防する上で重要なフッ素の作用には、次のものがあります。

1)歯のエナメル質にとりこまれたフッ素は、むし歯の攻撃に対して抵抗性のある硬い結晶をつくります。この作用は、口の中に顔を出した歯のエナメル質に唾液中の無機質が接触することによって起こる自然の現象です。しかし、この自然の抵抗性獲得現象を待っていたのでは、10年ほどもかかってしまい、その間にむし歯がどんどん発生し、進行していってしまいます。このように、歯の抵抗性獲得に必要な自然の現象を、フッ素はスピードアップする働きをしてくれるのです。

2)ほんのわずかに歯のカルシウムやリンが溶けだして、むし歯になりかかった部分を修復する作用があります。

3)むし歯の原因である歯の汚れの中に多数存在しているバイ菌の働きを弱めます。

4)フッ素は、歯にとってだけではなく、骨にとっても必要なもので、骨折や骨のミネラル低下の予防作用もあります。ミネラル低下によって骨の緻密度が悪くなるものを骨多孔症と呼んでいますが、年をとるにつれて、こうした傾向は強まっていきます。フッ素には、この進行速度を遅くする作用もあるのです。

このほかフッ素は、大動脈の石灰化の予防にも有効であることがわかっており、冠動脈疾患による死亡率の低下にも貢献していることが報告されています。

ただし、これらの作用は、飲食物や飲料水中のフッ素を摂取した場合に有効となるもので、フッ素塗布やフッ素洗口などの局所的な方法では、歯に対する作用が中心となります。




フッ素は無害

かつて、水道水にフッ化物が添加されている地域では癌による死亡率が高いという報告がなされたことがありましたが、その後の調査によって統計処理上の誤りであることがわかり、この報告は否定されました。現在では、アメリカ国立癌研究所を始めとする専門機関からも、水道水フッ化物添加と癌の発生とは無関係であることが示されています。

ただし、フッ素は、骨や形成途上の歯に多くとりこまれるために、これが過剰になると、歯に対しては「斑状歯」を、骨に対しては「骨硬化症」という病気をひき起こすことがあります。

とはいえ、フッ素をむし歯予防に用いる場合には、これらの障害が発生しない量に必ず調節されていますから、この点心配はありません。

ここで斑状歯についてもう少し詳しくお話しましょう。斑状歯とは、白点・白斑・白濁の縞模様の外観を有するエナメル質の総称のことなのですが、これがひどくなると、表面に小孔や陥没部が生じ、茶褐色の着色が見られるほどになることもあります。その原因としては、歯のエナノル質がつくられる時期におけるフッ素の過剰摂取、抗生物質の連用、栄養障害、熱性の病気によるもの、またむし歯の攻撃が加わってエナメル質の表面が軽度に溶けだした場合、さらに永久歯の前にはえていた乳歯がひどいむし歯であった場合など、様々な要因が考えられます。このうち、フッ素の過剰摂取が原因となる斑状歯を、特に「歯牙フッ素症」と呼びます。ただし、一度形成されてしまった歯や、すでにはえている歯に、フッ素塗布やフッ素洗口などによってフッ素をいくら作用させても、歯牙フッ素症になることはありません。





フッ素の効果

フッ素そのもののむし歯予防効果は、次のような研究方法から求められたものです。

まず、実際にフッ素を使う子どもたち(フッ素群)と、フッ素を使わずに、実際には水のようなものを使用した子どもたち(非フッ素群)に分け、研究の詳細を知らせずに、フッ素以外については同じ保健条件で判定することになります。さらに、むし歯の診査を担当する歯科医師にも、研究の詳細を知らせないで、計画された研究もあります(二重盲検法)。

こうした条件のもとで行なわれた2年間の研究によると、非フッ素群では1人平均10本のむし歯ができたのに対して、フッ素群では4本だけとなっており、これはつまり、フッ素によって、2年間で60%の予防効果があったということになります。これを「群間比較による判定法」と呼びますが、実際にフッ素を応用する場合は、前述の非フッ素群に相当する集団のかわりに、過去のデータを用いるようにします。つまり、フッ素の使用を開始する前のデータを非フッ素群と見なすわけです。たとえば、フッ素応用前の6年生には1人平均して10本のむし歯があって、2年後のフッ素を応用した6年生は4本になったとすれば、この場合にもさきほどと同じように60%の予防効果があったと判定するのです。

親知らずを除く永久歯は、個人差により多少前後しますが、ほぼ6歳ころからはえ始めて中学1年生ぐらいではえそろいます。

フッ素塗布、あるいはフッ素洗口は、その間、経年的に行なえば相当な効果が期待できます。







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